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第2回|男は皆、無意識に「臨戦態勢」だった――男性用トイレの、ちょっと物騒な作法

独眼流亮孔明の独日おもしろ異文化論 第2回

男は皆、無意識に「臨戦態勢」だった――男性用トイレの、ちょっと物騒な作法のイラスト

男性にしか関係のない、少し品のない話から始めさせてください。とはいえ、ドイツで37年暮らした私にとって、これは今でも忘れられない「発見」のひとつです。

日本の男性用トイレでは、多くの方が「支え銃」と呼ばれる構え――両手の指で下から支えるスタイルで用を足します。荷物があるときは片手で済ませることもありますが、基本はこの両手スタイル。誰に教わったわけでもなく、自然とその姿勢になっているはずです。

ところが、ドイツの男性用トイレに足を踏み入れると、まるで違う景色が広がっています。並んでいる人が、ほぼ全員、左手だけを使い、手の甲を上からかぶせるようにして構えているのです。まるで、何かを守っているかのように。

実際、守っているのです。

理由ははっきりしています。ひとつは、利き手である右手を常に空けておくため。用を足す瞬間は、人間がもっとも無防備になる瞬間です。右手さえ空いていれば、いつ何が起きても、とっさに反撃できる。もうひとつは、上からかぶせるこの構え自体が、急所を守る格好になっているということです。つまりドイツ式は、二重に身を守る構え。もはや、動物的な警戒本能としか言いようがありません。

さらに面白いのが、便器の選び方です。五つ並んでいても、まず端から埋まっていく。端であれば、危険が及ぶ方向を片側だけ気にすればいい――そこまで無意識に計算しているのだとしたら、恐れ入るほかありません。

一方の日本は、用を足す瞬間に誰かに襲われる心配など、まず要らない安全な国です。だから無防備なまま、両手で下から支える「支え銃」のスタイルでいられる。防御力はほぼゼロですが、それは長く平和に暮らしてきた何よりの証でもあります。

同じ生理現象をしているだけなのに、片方は臨戦態勢、片方はまったくの無防備。
手の位置ひとつに、その国がどれだけの「安心」を積み重ねてきたかが表れている気がして、私にはなんとも興味深く映るのです。

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