独眼流亮孔明の独日おもしろ異文化論 第4回

ドイツでリンゴや桃を出すと、たいていの人は皮をむかずにそのままかじりつきます。長年、現地で暮らしながら数えてみたところ、95%以上が皮つきのまま食べていました。
理由としてまずよく語られるのは、「皮のすぐ内側に栄養や甘みがいちばん詰まっている」という、この100年ほどで広まった知識です。ただ、これは後づけの理由で、もっと根本にあるのは「動物は汚れていようが落ちていようが、空腹ならそのまま食べる」という素朴な習慣ではないかと私は見ています。多少土がついていても気にしない、というのがドイツの食の基本姿勢です。
もうひとつ、日本ではあまり語られない理由があります。小さくて硬いリンゴを噛み砕くときの、あの「歯ぐきの感触」そのものを楽しんでいる人が多いのです。骨ごと肉を噛みちぎっていた祖先から続く感覚なのかもしれません。ルフトハンザ機内食のフルーツポンチのリンゴも、ほぼ皮つきのまま細かく刻まれています。ぶどうも皮どころか種までガリガリ噛み砕いて飲み込んでしまう人が大勢います。
一方日本では、歯ごたえよりも「清潔さ」が優先され、皮をむいて食べるのが一般的です。森で獣を追っていたドイツと、田畑を耕してきた日本――育ってきた環境の違いが、果物ひとつの食べ方にまで表れているようで、私にはとても興味深く映ります。
もっとも日本でも、山梨の果樹園を訪ねると、農家の方はリンゴも桃も皮をむかずにそのまま出してくれます。都会では「とろけるほど熟した甘い桃」が好まれますが、産地では「硬くて歯ごたえのある桃」こそ「これが一番うまい」と言われる。ドイツと日本というより、都会と産地の違いなのかもしれません。
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