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第6回|「10年前の今日」をわざわざ流す国――ドイツ人の、静かな政治への誠実さ

独眼流亮孔明の独日おもしろ異文化論 第6回

「10年前の今日」をわざわざ流す国――ドイツ人の、静かな政治への誠実さのイラスト

ドイツにいたころ、テレビをつけると「ちょうど10年前の今日のニュース」を振り返るコーナーによく出くわしました。ニュース番組の一部を使って、10年前に当時の首相や大臣、ジャーナリストが何を言い、何を公約していたかを、あらためて流すのです。

これはただの懐かしみではありません。10年前の発言を今あらためて検証することで、「あの政策は結局よかったのか、悪かったのか」を国民が客観的に判断できるようになります。政治家からすれば、いい加減な発言や、その場しのぎの公約が、いずれ検証の対象になると分かっているわけです。過去の事実から学び、自分の発言に責任を持つための、いわば「反省の材料」が、日常的に用意されている感覚でした。

忘れられないのは、朝の通勤ラジオでのことです。「今日は神風特攻隊の記念日です」という一言から始まり、その歴史的背景を15分ほどかけて丁寧にレポートしていました。日本人の私が、ドイツのラジオで初めてその日のことを意識させられたのです。同じ時期、テレビでは10年前の首相の発言が検証されていました。メルケルやコール、シュレーダーといった歴代の首相の発言も、こうして繰り返し振り返られてきたのでしょう。

日本では、過ぎたことをあまり振り返らずに前へ進むことが多いように感じます。それも一つの美徳ではあるのですが、過去の政治家の発言を定期的に検証する仕組みがあれば、有権者にとっても政治家自身にとっても、悪くない緊張感になるのではないでしょうか。歴代の首相の発言も、いずれ同じように振り返られる日が来るかもしれません。歴史に対するこの誠実さと、少し哲学的とも言える姿勢は、日本のメディアも取り入れる価値がある習慣だと、私は思っています。

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