独眼流亮孔明の独日おもしろ異文化論 第5回

ドイツのオフィスでは、窓を大きく開け放つことはまずありません。上部だけがわずかに傾いて隙間から風が入る「ドレーキップ窓」という構造が、ほぼ標準になっています。もし窓を2か所少し傾けて、その間に風の通り道ができてしまうと、「風邪をひくから、すぐ閉めなさい」とかなり厳しく注意されます。たかが隙間風で、と思うのですが、反応は本気です。
なぜここまで風の通り道を嫌うのか。理由をたどっていくと、ドイツの地形に行き着くように思います。ドイツには石灰岩質の土地が多く、水に浸食されてできた鍾乳洞があちこちにあります。ネアンデルタール人をはじめ太古の祖先たちは、こうした風の入りにくい洞窟を住まいにして暮らしていました。風が通り抜ける環境に慣れていない歴史が長いぶん、室内を風が吹き抜ける状態を、どこか本能的に落ち着かないと感じるのかもしれません。
エアコンの普及率にも、同じような感覚が表れています。ドイツの一般家庭には、今もエアコンがほとんどありません。私がドイツにいたころ、デュッセルドルフに「ホテル日航」を建てる際、「夏に冷房が必要なのは年に1〜2週間程度なのだから、設置するべきか」と大真面目に議論になり、結局見送られたことがありました。今でこそ温暖化の影響で商業施設やレストランには広まりましたが、石造りの頑丈な住宅には穴を開けての設置が難しく、家庭用のエアコンはいまだにほとんど普及していません。私の息子の家にもありません。
一方の日本は、もともと木造で隙間風のある家に暮らし、日陰に入ったり、風通しの良い二階や納戸を使ったりしながら暑さをしのいできました。さらに団扇や扇子で自分から風を起こして涼む文化もあります。ドイツには、そうした道具そのものがありません。大陸特有の吹き抜ける風を、家の造りごと利用してきたドイツと、隙間風と付き合いながら自分で風を起こしてきた日本――涼のとり方ひとつにも、住まいの歴史の違いが表れているようで、私には興味深く映ります。
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